「報われない」と感じている多くの人は、自分では気づかないうちに、自分の外側に「報われる」ための何かを求めています。そして、自分ではコントロールできない、外側にある何かに振り回されて、自分を苦しめているのです。
私の元に寄せられる悩みを「健康」「人間関係」「仕事・お金」に分け、ここから数回にわたって、執着を手放すコツをお伝えしていきます。
若さや美しさにこだわる
「アンチエイジング」という言葉が一般的になってから、老化とは戦うものだという考えが広まったように思います。
年齢を重ねるのはよくないこと、劣化している、などと言われることが多くなりました。
もちろん、見た目や体力が20代や30代のころと変わらずに、若々しくあるのは悪いことではありません。
でも必要以上に、自然な年齢に抗って、自分が持つ「今の良さ」を見失っている人も少なくありません。
会うたびに「最近、髪の毛が減ってきた」「目尻にシワが増えた」「お腹がたるんできた」などと、自分の容貌の衰えについて嘆いてため息ばかりつく女性がいました。
ボクからすればこの女性は、40代という年齢の割に若々しく見えていましたが、本人が、いつも小さな老化をクヨクヨと気にして、表情がさえません。
誰でも平等に年をとるのですから「もっと若々しく」と、今の自分を否定するようだと、いつまでたっても「報われない」ままでしょう。
必要以上に老化を気にしない
日々を充実させ、楽しく暮らすためにも「健康」はとても重要な要素です。実際に私は、元気でいるために、食事やエクササイズにはとても気を使っています。でもそれは、若さにしがみついているのとは違います。
人間も生物ですから、年齢を重ねれば体力は落ちてくるのはあたりまえ。シワやシミも増え、見た目も衰えてきます。人は誰でも平等に年をとります。自然な老化は受け入れながら、今の自分を最大限に活かしてあげる努力は惜しまない。そんなスタンスでいることが、幸せに生きる基本です。
また、必要以上に病気を恐れるのも、心の平穏を乱す原因となります。病気やケガなどは相対的なものであり、自分でどうにかできるものではありません。どんな人にとっても、予想もしない事態は起こるものです。
仏教の基本的な教えにあるように、そもそも人生は「一切皆苦」であり、思うようにはいかないもの。でも、だからと言って、投げやりになるのとは違います。不測の事態は起こりえる。そのことを心に留めておくだけでも、何か起きたときに自分を見失わずに済むでしょう。
それよりも私は「誰もが生まれた瞬間から死に向かっている」という事実を受け止め、生きている間をいかに充実させるかに力を注いだほうがいいと考えます。死なない人生を歩める人はいないのですから。

「スピリチュアルヘルス」を大切にする
これまでは「健康になる」というと、食事や睡眠、そして運動などのバランスを整えることが主に行われていました。また、検査の数値が正常であれば「健康」とされていました。
でも、数値だけで健康だと言えるかというと、そうではないと私は考えます。食事、運動、睡眠など以外にも「スピリチュアルヘルス」が、「報われる」ためには大きく関係しています。
国連の専門機関であるWHO(世界保健機関)は、これまでの3つの健康の定義(体の健康、精神的な健康、社会的な健康)に加え、「スピリチュアルヘルス(魂の健康)」を追加すべきという議論がなされたことがあります。最終的には「必ずしも追加の必要はない」という結論に落ち着きましたが、それ以来、「スピリチュアルヘルス」は注目を集めています。
日本では「スピリチュアル」というと、神秘的なこと全般を指す場合が多いですが、「スピリチュアルヘルス」とは生きている私たちの心の健康のことです。「精神的健康(メンタルヘルス)」との違いは、メンタルヘルスは主に、悩みがあるかどうかで測られることが多いのに比べ、スピリチュアルな健康観は、今の自分を認め、心穏やかに生きることが中心となっている点です。
「スピリチュアルヘルス」が聞き慣れない言葉だからといって、難しく考えなくても大丈夫です。常識やまわりの声などの、自分の外側にあるものに振り回されず、自分の心の声に常に耳を傾けてあげましょう。そうすることで「スピリチュアルヘルス」も健全に維持することができるはずだからです。