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第九回「怒りを感じたら、その場を離れてみよう」

第九回「怒りを感じたら、その場を離れてみよう」

仕事が思うようにいかない……。

人から嫌な態度をとられた……。

順番待ちが長くてイライラする……。

このような「怒り」を感じる場面は、日常的にいろいろとあると思います。「怒り」は、爆発させれば人間関係にヒビが入りますし、ぐっと飲み込んでもストレスがたまります。怒りの対応は誰にとっても切実です。

「怒り」は、肉体的、そして精神的に「危険にさらされた」と感じると起こります。たとえば、わき見をして走ってきた自転車にぶつかりそうになったら、自分の体が危険にさらされるわけですから「おい! 何をやってるんだ」と怒りがわきます。

一方で、自分を認めてくれない、ウソをつかれた、思い通りにいかないなど、自身の存在が脅かされても怒りを感じるはずです。「自分はもしかしたら、こんなところがダメなのかも?」と薄々感じていることがあり、誰かにそこを突かれたときに怒りを感じるのも同じ理由からでしょう。

ところが仏教では、たとえどんなことが原因であれ、またどんなときでも「怒る」という行為は悪いと説いています。「怒り」は、怒られた相手だけでなく、怒った本人にも毒のように悪影響を及ぼし、関わる人全員を不幸にするとまで言われているのです。

仏教の基本を貫く思想に「因果の道理」というものがあります。道理とは、いつでも、どこでも、変わらないこと。因果は、すべての結果には原因があること。仏教においては、「どんな結果にも、必ず原因がある。原因のない結果はありえない」と考えます。

つまり、「怒り」が原因で生み出すものには、よい結果が生まれるはずがないということなのです。

私は20代の頃、いくつもの会社を経営していたとき、毎日のように社員を怒鳴り散らしていました。思い通りに動いてくれない社員にいら立ち、威圧的に攻撃してその場でいうことを聞かせようとしていたのです。

今から考えると、怒っている自分も嫌な気持ちになり、さらにイライラが重なるばかり。その場は丸く収まったように見えても、期待したようないい結果になることは結果的にありませんでした。

心理学では、怒りはため込まないで発散させたほうがいいと言われたりします。あなたも「怒るべきときもあるんじゃないの?」と思うかもしれません。でも、人間の怒りからわき出る衝動は、わずか6秒しか続かないと言われています。

たった6秒をやり過ごせば、あとあとになって後悔するようなことを口走らなくて済むのです。お釈迦様は、一度、怒りを行動に移すと次も同じようにすると言っています。言いたいこと、伝えたいことがあるのであれば、心を落ち着けたあとに説明すればいいのです。

それでも、イラッとすることはときどきあるでしょう。そんなときは、黙ってその場を離れるようにしてみてください。もし家族の言葉に腹がたったら、手を洗いにいけば6秒は経過します。そして心を落ち着けて、また会話を再開すればいいのです。

また、相手の何気ない一言にカチンときたとしましょう。そんなときは、無理に気持ちを抑え込もうとするのではなく、「なんで、こう言われたら“バカにされた”と思うのかな?」と、自分の心の動きに目を向けるのです。すると「バカにされた」と思う、あなたの判断そのものが「怒り」を生み出していることがわかるでしょう。

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