“死”について考えたことはありますか? または、自分はあとどのくらい生きられるか想像したことはありますか?
厚生労働省によると、2023(令和5)年の日本人の平均寿命は男性が81.09歳、女性が87.14歳です(平均寿命とは、0歳の人の平均余命を言います)。平均寿命まで生きられると仮定した場合、「365日×○年(平均寿命-現在の年齢)」で出た数字が、あなたに残された時間(日数)です。
私の残りの人生はおよそ○○日です。1日が終わるごとに確実に減っていくこの数字を、私は毎日、スマホのアプリで確認しています。この○○日は「まだ、たっぷりある」のか、「たったそれしかないのか」と思うかは人それぞれでしょう。
平均寿命を超えるほど長く生きられるかもしれませんが、私はあえて低めに見積もり、70歳に設定して計算しています。その結果が、○○日なのです。
人は無意識のうちに「いつもの日常」がずっと続くと考えます。それが何歳になろうと、「まだ10年はあるだろう」と考え、人生には限りがあるという事実から目をそらしてしまいます。しかし、私も含め、誰でも何歳でも、いつ何が起こるかはわかりません。
死ぬ前に後悔しないよう、生きている時間を充実させるためには、自分に残された時間に目を向け、そして「自分はいつか必ず死ぬ」という事実を受け止めることが必要です。人は皆、生まれた瞬間から1歩ずつ死に向かっています。誰のもとにも死は必ず訪れます。
死について考えるのは、怖いかもしれません。多くの人は死にたくないと思っています。たとえ「天国に行ける」とわかっていても、今すぐ死にたいと考える人はいないでしょう。それでも、お釈迦さまが示された「生老病死」の四苦(しく)にあるように、人は死の苦しみから逃れることはできません。その当たり前の事実をまずは受け入れることで、今を生きることができるようになります。
私が初めて死を強く意識したのは、仲良しだった叔父が亡くなったときです。祖父の弟である叔父は祖父と同じく商売人で、私が子どもの頃からいろいろなことを教えてくれました。私が20代で起業したあとは、叔父から学んだ知恵で苦境を乗り越えたこともありました。
そんな叔父があるとき、すい臓ガンと診断されました。進行するスピードが非常に早く、診断から半年後には危険な状態になり、看病する私の手を握りながら息を引き取りました。それまでも親族の死は何度も経験していましたが、そのとき強烈に「人はいつか死ぬ」という事実が身にしみたのです。
叔父の死をきっかけに、「人生は有限であり、誰もが死に向かって生きている」ことを実感した私の生活は大きく変わりました。それまでは人目を気にして、「かっこいい」と言われるために時計や服を選び、高級レストランで食事をするような生活をしていましたが、心地いい服を選び、心を許せる仲間との食事を大切にするようになりました。
もし、「あなたに残された時間は10年です」と知らされたら、今と同じ毎日を送るでしょうか? おそらく「もっとこうしたい」「こんなことはやめよう」という思いが出てくるはずです。何をしたいか、どんな人生を歩みたいかは人それぞれです。ただ、世間の常識などに縛られず、「今」を精一杯生きてほしいのです。