ボクが20代でビジネスをしていたときは、知らないことだらけ。
商品の売買をより大きくすることができても、社員を教育したり、自分が経営に集中するために事業の仕組みをつくるなど、考えたこともありませんでした。
そのため、しょっちゅうトラブルに見舞われて、年上の経営者に相談していました。
当時のボクは「若僧」扱いされるのがイヤで、早く大人になりたい、 30代、40代の尊敬する経営者のようになりたいと思っていました。
でもそんなボクに、先輩たちは皆、口をそろえて「今が一番いいときだなぁ」と言うのです。
その頃は、なぜそう言われるのかまったく意味がわかりませんでした。
でも、今ならわかります。 死ぬ気でがんばり、失敗してもへこたれない気力や体力があるのは、若いうちの特権だからです。
20代の頃とは逆に、40代も半ばになった今は、友人たちのまだ幼い子どもを見ると、 無限の可能性を秘めているのをうらやましく感じます。
人間はしょせん、ないものねだりなのです。
だからといって「ああいう風になりたい」「これを実現したい」という欲望をすべてなくしてしまうことが、今を幸せに生きる道だとはボクは思いません。
たしかに仏教には、欲や煩悩を抑えて悟りを目指すという、ストイックな面もあります。
でも、親鸞はそう説いてはいません。
ボクも「お金」「愛」「他人の評価」「見栄」などをコントロールすることは、一歩前に進む力になり得ると思っています。
ただ「人の欲は尽きることはない」と知っておかなければなりません。
すると、自分の今を充実させるための欲望と、ただ「何かが足りない」と不足感から出てくる欲望の区別がつくようになるはずです。
そうなれば、手放すべき欲望がどれか自然にわかってくるでしょう。