浄土真宗の開祖である親鸞は、仏教史上、最も「わきまえなかった」僧侶だと言えるのではないかと思います。
仏教の宗派の多くは、自分の欲や怒りなどの「煩悩」を抑える修行を重ね、悟りを開くことを目的としています。
煩悩を手放すよう努力、精進するわけですから「食欲」や「財欲」「色欲」などを 満たすことは禁じられています。
しかし親鸞は、仏教史上初めて正式に結婚し、肉食していることも隠しませんでした。
また、それまで主流であった「修行を重ねて悟りを目指す」のではなく、「長く苦しい修行は必要ない。“南無阿弥陀仏”と唱えるだけで誰もが救われる」と説きました。
仏教界では「当たりまえ」とされていたことからかけ離れた親鸞の行動や教えは、 当時、どれほどセンセーショナルだったことでしょう。
ただ親鸞が「わきまえていない」行動をとったからこそ、それまでは上層階級が学ぶものだった仏教の教えが庶民に伝わり、たくさんの人が救われたのです。
そんな親鸞の教えは、悩みながら現代を生きるボクたちにも必ず役に立つものだと思います。
なぜならボクは、「修行」こそが仏教を「近寄りがたいもの」にしている最も大きな要因の一つだと考えているからです。
親鸞の教えをもとにしたこの本は、そもそも「修行はいらない」と言っている時点で、仏教界の習わしを「わきまえていない」かもしれません。
でも、仏教について書かれた本の多くについて、「ありがたいんだけど、わかりづらい」「なんとなく、いいことを聞いた気にはなるんだけど、人生に役立ったかどうかわからない」という声が多いのも事実です。
この本ではもしかしたら、これまでの仏教本とは大幅に異なる悩みの解決策を提案 するかもしれません。
でも、迷い悩む人が思い切って、一歩踏み出せるようなやり方をお伝えしているつ もりです。
「お釈迦様の教える仏教が、宗派によってそんなに違っていていいの?」と、あなた は思うかもしれませんね。
ボクは、宗派によってやるべきことが違うのは、単に「今をよりよく生きる」ためのアプローチの違いだと考えます。
どの宗派が正しくて、どれが間違っているなどありません。
あなたの心に響くやり方を選べばいいのです。
お釈迦様が提唱した教えは一つです。
ただお釈迦様の死後に、説法の内容が多くの弟子の解釈により、さまざまな形で残されていたのです。