仏陀倶楽部に、新たな僧侶・竹下暁蓮(たけした ぎょうれん)さんが加わりました。高野山真言宗での活動を経て、2026年に仏陀倶楽部(得藏寺)の所属僧侶となった方です。竹下さんが僧侶を志した出発点は、特定の宗派や教義ではありませんでした。病気や大きな喪失を経験する中で、ヨガと仏教に出会い、「僧侶という生き方をしたい」という思いが育っていったと言います。今回は竹下さんご本人に、その歩みをうかがいました。仏陀倶楽部の愛葉代表も加わり、なぜ僧侶になったのか、なぜここに来たのか、これから何をしたいのかを語っていただいています。(聞き手:編集部)
宗派より先に、「僧侶という生き方」があった
——竹下さんは今回、仏陀倶楽部(得藏寺)の所属僧侶になられました。もともと僧侶を目指したきっかけを教えてください。
竹下 「どこかの宗派のお坊さんになりたい」と思ったわけじゃないんですよ。ただただ、僧侶という生き方をしたい、という気持ちでした。
——宗派より先に、「生き方」があったと。
竹下 そうなんです。それでいろいろなお寺に問い合わせました。でも、大きなお寺だと決まって「まず師僧を見つけてきてください」って言われるんですよ。師僧を見つけることができないから問い合わせているのに……。
——それは困りますね。
竹下 根気よく探していたら、たまたま、僧侶を募集しているお寺と縁がつながって。そこからがスタートです。
愛葉 私はよく、「物事は起こすものじゃなくて、起こるもの」と言うんですけど、竹下さんは人生の歩みそのものがまさにそうで。宗派や教義からではなく、いろんな経験が積み重なった結果ですね。
——仏教に関心を持ったきっかけは何だったんですか?
竹下 そもそもの入口は、仏教じゃなくてヨガなんですよ。私は35歳のときに子宮癌を患いまして、手術、抗がん剤、放射線治療……ひととおり経験して、そこから健康の大切さに目覚めて、ヨガと出会ったんです。ヨガを学んでいると、その哲学にはお釈迦様の名前が出てくるんです。ヨガの学びの中でも、ブッダという存在に触れる機会があって。
——そこで仏教に触れたんですね。
竹下 子どもの頃からお釈迦様のことは知っていたし、おばあちゃんがお仏壇に手を合わせていたのも見てましたけど、ピンとは来てなかったんですよね。でもヨガの哲学と重なりながらお釈迦様の言葉を読んでいくと、「もうまさにこれだ!」となって。そして、とにかく勉強して実践に取り入れていったら、人生が楽しくなって。「あ、これで生きていこう」と思ったんです。それからインストラクターとしてインドにも何度も渡って、現地の認定資格も取って、37歳でヨガスタジオも立ち上げました。そのさなかに、仏教の教えがどんどん自分の中に入ってきた感じですね。
苦しみの中で、仏教が支えになった
——竹下さんには、大きな喪失の経験があると伺っています。
竹下 はい。2010年に、最愛の長男を亡くしました。
——……それは、どれほど大変だったか。
竹下 生きる気力を失って、深刻な状態が続きました。精神科にも通いましたが、なかなか出口が見えなくて。そこから立ち上がれたのは、次男をはじめ周囲の方々が支えてくれたこと、そしてヨガと仏教の哲学が支えてくれたことも大きかったですね。息子が亡くなってお坊さんが家に来てくださって、お説法をしていただいたことも、大きく影響していると思います。
——仏教が、竹下さん自身を救った。
竹下 そうですね。最初はもう、自分が楽になるために仏教を学んでいたんですけど、徐々に、「自分も苦しんだ経験があるからこそ、苦しんでいる人に関わりたい」という思いに変わっていきました。
——仏教と出会う前と後で、人生観は変わりましたか?
竹下 それはもう……最初は、とんでもない享楽的な人間でした(笑)。2人の息子を育てながら、とにかく自分中心だったと思います。それが、病気をして、ヨガに出会って、「ちゃんと生きなきゃ」と思わせてもらって。そこに仏教の教えが重なって、「あ、自分のためだけに生きてちゃいけないんだな」ってわかってきたんです。自分が幸せになりたかったら、やっぱり周りの人も幸せにしなきゃいけない。すごく変わりましたね。
生きている人に関わる僧侶でありたい
——「僧侶になろう」と具体的に考えたのは、どんなきっかけだったんですか?
竹下 降りてきたんです(笑)。
——降りてきた(笑)。
竹下 ヨガスタジオで毎朝、神様にお祈りをするんですね。アラティっていうんですけど。そのときに、ふっと「あ、私、僧侶になろう」と思ったっていう、それだけなんです。きっかけはそれだけです。
——何か決定的な出来事があったわけじゃなくても、なれるものなんですね。
竹下 そうなんです。なろうと思ったらなれるんだ、という感じで。2022年に仏門へ入り、2023年に僧侶資格を取りました。
——最初は高野山真言宗のお寺で活動されていたんですよね。
竹下 はい。ただ、当時はお葬式と法要とお寺の管理が主な仕事でした。もちろん大切な役割ですから、心を込めてやっていたんですけど、ちょっとずつ「本当にやりたかったこと」とのギャップにモヤモヤが強くなってきました。
——本当にやりたかったことというのは?
竹下 生きている人に関わることなんです。生きている人の悩みや苦しみを、少し薄くするお手伝いがしたくて。そして、ご住職には1年ちょっと経ったときに、「生きている人に関わりたいんです」と話したら、最終的には快く送り出してくださいました。ありがたかったですね。

仏陀倶楽部で見つけた、現代の僧侶のあり方
——それで仏陀倶楽部にたどり着いたんですね。
竹下 モヤモヤを抱えながらいろいろ調べていくうちに、「人生を変えるのに修行はいらない」とおっしゃっている愛葉さんの書籍に出会って。まさにこれが私のやりたかったことだ、と思ったんです。そしてすぐ問い合わせました。そうしたら「うちにいらっしゃいますか」と言ってくださったんです。でも、当時は関西にいる必要がありました。だからすぐに、というわけではなくて1年ぐらいの時を経て、私から連絡させていただきました。
愛葉 竹下さんはすでに僧侶としての経験があり、「もっと広くどんな人の相談も聞けるようになりたい」という希望を持っていました。仏陀倶楽部は基本的には人種、性別、学歴、職業、もちろん国や地域も問わず、多くの方に門を開いています。その姿勢と、竹下さんのやりたい思いがぴったり重なっていたのでしょう。
——竹下さんにとって、現代における僧侶の役割とは何でしょうか。
竹下 2500年前のインドの僧侶たちは、ひたすら瞑想して托鉢して、皆さんに支えてもらって……というのができた時代ですけど、今それをそのままやるのは無理ですよね。僧侶も生産活動しなきゃいけないし、俗世とも関わっていかなくちゃいけない。だから私は、悩みや苦しみを言葉にして整理する手伝いをすること、だと思っているんです。それができるのは僧侶だし、それを求めている方が本当に多いんじゃないかと。
——実際に相談を受けることもあるんですか?
竹下 ありますよ。深刻な悩みを抱えている方から相談を受けることもあります。そういうとき、私の個人的な意見だけで話しても、なかなか届きません。それよりも、お釈迦様の言葉や親鸞聖人の言葉を事例として出すと、相手がストンと納得しやすいんですよ。
愛葉 苦しみを言葉にして整理して、生き方を見直す手助けをする。そういう役割が、現代の僧侶にはあると思っています。竹下さんはその経験を、自分自身の人生で積んできた人なんだと思います。
僧侶になるとは、今の自分に生き方を加えること
——仏陀倶楽部には、得度された方が多数います。どんな人が多いのでしょうか。
愛葉 本当に幅広いですよ。弁護士や医師を含む士業の皆様や、仕事を引退した高齢者の方など、年齢も職業もさまざまです。
——得度までの期間はどのくらいでしょうか。
愛葉 特に決まっていませんが、おおよそ1年前後です。竹下さんが加わったことにより、より多くの皆さんと向き合えるようになりました。
——「僧侶になる」と聞くと、職業を変えることだと思う人も多いと思います。
愛葉 僧侶という生き方を「自分の中に加える」という感じです。今の自分に「替わって」そっちになる、ということではありません。今の自分の中に、僧侶としての考え方や受け止め方が加わることで、自分自身の生き方が広がっていくというイメージです。
——竹下さんもまさにそれを体験してきた一人ですね。
竹下 そうですね。以前の私とは別人みたいに変わったけど、別人になったわけじゃないんですよ。悩みとの向き合い方が変わって、人との関わり方が変わって、自分自身の幅が広がった感じがします。
愛葉 私は、僧侶は「職業」ではなく、まずは生き方だと思っています。もちろん、お寺に勤めて本業として取り組んでいる方も多くいます。ただ、今の生活を続けながら、僧侶としての見方や生き方を取り入れる。それでもいいんです。「僧侶」は、自分自身に加わる生き方そのもの。言うなれば、肩書きではなく、在り方だと思います。
入口は、お茶でもヨガでもいい
——竹下さんが今、取り組んでいる活動を教えてください。
竹下 「お経とお茶の会」や写経の会、あとヨガなど、カルチャーを組み合わせた形で始めています。仏教ってハードルが高いと思われがちです。お茶だってそうですよね、着物を着ていかなきゃとか、お作法が難しいとか。でも、「僧侶にこんなカジュアルに話を聞けるんだ」「お茶もこんな感じでできるんだ」と感じてもらえると、もっと日本文化や仏教に興味を持ってもらえるのではないかと思って。
——カルチャーが入口になる、ということですね。
竹下 そうです。「あいさつって元々仏教用語なんですよ」と話すと、若い人は「えー、そうだったの!」と興味を持ってくれたりします。そういう入口からで全然いいと思っていて。
愛葉 ほとんどの人が、宗派の違いを知りません。ですから最初に必要なのは、とにかく「きっかけ」なんです。仏陀倶楽部は、その仏縁をつくる場で、竹下さんはその入口で人と向き合ってくれる存在です。
——これからについて聞かせてください。
竹下 仏教を生き方に加えると、悩みとの向き合い方や、人との関わり方が変わると思うんです。揉め事も少なくなるし、楽になる人は多いんじゃないかと思っています。それにもっと気づいてほしいな、と思っていて。生きている人にこそ仏教を届けたい。苦しみから少し離れて、楽になるお手伝いがしたい。多くの方に、生きる喜びに触れてほしい。その思いを持ちながら、愛葉代表のもとで共に取り組んでいきたいと思っています。
——いきなり得度へ進むのではなく、まず仏教に触れてみたい人は、どこから始めるのがよいでしょうか。
愛葉 まずは公式LINEへ登録してみてください。仏陀倶楽部のさまざまな情報にアクセスできます。その中に「ブッダレポート」というものがあります。これは会員の皆さんが自分の内側を見つめ、日常の悩みや人間関係、生き方の迷いをレポート形式で書いたものです。まずは内観、つまり自分自身をじっくり見つめ直すことをとても大切にしていて、ブッダレポートはその入口になっています。
——さらに深く学びたい方には、スクールがある。
愛葉 スクールは、仏教を知識として学ぶだけではなく、僧侶という生き方を自分の中に加えていく場です。本業を変える必要はありません。今の生活の中に、仏教の見方を取り入れていく。その実例が、竹下さんの歩みでもあります。
竹下 そうですね。僧侶になったからって別人になるわけじゃなくて、自分の幅が広がる感じ。「こういう生き方もあるんだ」って気づいてもらえたら、それだけで十分だと思っています。まずは気軽に触れてみてほしいですね。



















僧侶、著述家、宗教法人得藏寺 代表役員
愛知県名古屋市出身。浄土真宗大谷派である名古屋大谷高校業後、20歳で独立起業。自動車販売業、美容事業、飲食事業、リサイクル事業と、次々に事業を立ち上げる。
独立起業後10年を経て自身の中に湧きあがる疑問と向き合うため、事業を整理し、ヨーロッパを中心に世界30カ国以上を旅する中で、多くの宗教や文化、習慣や常識の違いに触れる。
「人は生きているだけで毎日が修行」という考えに至り、時代が変化しても自然淘汰されない“在り方”を仏教に見出す。
現在は誰もが「得度」し、僧侶になれる機会を提供している。
信念は、「人生を変えるのに修行はいらない」
愛葉宣明 著 『仏陀経営』ほか
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