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第三回「仏教は何のためにある?」~人生を変えるのに修行はいらない~

私は名古屋にある浄土真宗系の「学校法人 尾張学園 名古屋大谷高等学校」を卒業しています。必修で宗教の授業を受けたり、東本願寺に研修旅行に行ったりするなど、仏教の教えについては、一般の方よりも多少学んでいます。

でも、その教えの本当の意味を少しずつ理解できるようになったのは、30代後半になってからです。学校を卒業したあと、私は新車販売のディーラーを経て、中古車販売の会社をスタート。その後、次々に事業を立ち上げ、「新進気鋭の経営者」として新聞の取材を受けたり話題に取り上げられたりしたこともありました。

一見すると順風満帆の人生を送っていました。チヤホヤされると「自分はすごい」と勘違いします。私もその例にもれず、もっと自分をよく見せようと見栄を張り、派手に遊んでいました。

また、うまくいっているときは、いろいろな人がまわりに集まってきます。その結果、友達だと信じていたのに裏切られたり、お金を騙し取られたりすることも増えました。そんなことが続くと、お金を稼いでいても、心にぽっかりと穴が開いたようになったのです。

ちょうどその頃、大好きだった叔父が亡くなり、自分の人生についてあらためて考えるようになりました。

自分は何のために仕事をがんばっているのか?

このままの人生で本当に自分は幸せなのか?

出口の見えないトンネルでさまよっていると感じたとき、頭に浮かんだのが、かつて学んだ親鸞の教えでした。お釈迦様が一切皆苦(人生は思いどおりにならないことばかり)と言うように、人生は苦に満ちています。生きるのはラクなことではありません。

その上で、悩みや苦しみの原因を探り、さらに取り除く方法を示しているのが仏教です。そのやり方は宗派によってさまざまです。複数の経典を読むことを重視する宗派もあれば、坐禅などの修行を大切にする宗派もあります。

その点において、浄土真宗はとにかく民衆に寄り添っています。なぜなら、親鸞は比叡山を下り、民衆と同じように生活をしました。一般的な僧侶とは異なり、農業をすれば、結婚もしました。つまり、日常に起こる苦しみや悩みを同じように体験したのです。

だからこそ、親鸞の教えに私は救われたのです。出家して修行を積んだり、厳しい戒律を守ったりしなくても、また、年齢や性別、身分や職業などは一切問わず、どんな人でも全員を必ず救われます。その教えは、私たちの日常に根ざしたものです。

仏教は「現実の世界によりよく生きる」ことを考えるきっかけをくれるーー私はそのように考えています。しかし残念ながら、仏教がどれほど人生に役立つ教えなのかを知らずにいる人がほとんどです。

人は日々暮らす中で、毎日やるべきことに追われていて、「今をどう生きるか」について思いをめぐらすことはほとんどありません。だからこそ、少しでもいいから仏教の教えに触れて、今をよりよく生きるためのチャンスとしてほしいと思っています。

生きていれば、誰にでも仕事やお金、人間関係の悩みなどの「苦」が付きまといます。そして悩み、迷ったときに一つの選択肢を示し、心の拠りどころとなってくれるのが、仏教であり宗教です。宗派による違いはあれど、根本的には問題解決の手法を提案する合理的な教えなのです。

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