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地獄の意味や種類・落ちる条件などから日常のヒントを見つける

皆さんはこれまでに「地獄」という言葉を聞いたことがあるでしょう。日本では古くから地獄に関わる教えが説かれ、子ども向けの童話や文学でも地獄をテーマに用いているものが多々あります。

しかし、実際に地獄がどのような構造になっているのか、何をしたら地獄に落ちるのかを理解している人は少ないでしょう。

この記事では、地獄について詳しく解説します。地獄の意味や種類、落ちる条件、解放される方法についても紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

地獄について知ることで、日々の自分の行いを見つめ直せる機会を得られることでしょう。

人間は仏になるまで六道(地獄・餓鬼・畜生・修羅・人間・天上)を巡る

仏教では、輪廻転生(りんねてんしょう)という教えがあります。輪廻転生は、人は死後、新たに生まれ変わり再び死を迎え、また生まれ変わるという考え方です。

無限のサイクルである輪廻転生は、仏教だけでなくヒンドゥー教やジャイナ教の教えでも説かれています。

輪廻転生では、善い行いをした生を終えると、次の生で善い生まれ変わりができると考えられているのが特徴です。

輪廻転生では、地獄、餓鬼、畜生、修羅、人間、天上の6つの世界が存在し、その生をどのように過ごしたのかによって、どの世界に転生するのかが決められます。

そもそも地獄とは?_

地獄とは輪廻転生の一角を担い、日本では古くから「奈落の底」と呼ばれています。輪廻転生の6つの世界(六道)のなかで最も辛い苦しみを受ける世界として知られ、おとぎ話などでも恐怖や絶望の象徴として描かれることが多いでしょう。

一方で、地獄に落ちるという事は、罪を償うチャンスを与えられると受け取ることもできます。なかには、「地獄は転生への近道」と説く者も居り、悪い事ばかりではないと考える人も少なくありません。

続いては、地獄についてさらに深堀りしていきましょう。

地獄の意味

地獄は仏教に限らず、多くの宗教で「苦しみの世界」「罪を犯した人のいく世界」「神仏の教えに反した者の行く先」として語られています。また、地底の奥深くにあるとされる描写が多く、「地獄」という言葉の語源も、地下深くにある牢獄をイメージしているという説があります。

地獄に落ちる条件

仏教においては、以下の罪をひとつでも犯してしまうと輪廻転生の先が地獄になる可能性があると言われています。

  • 殺生(生き物を殺す・傷つけること)
  • 窃盗(盗むこと)
  • 姦淫(性に関する不道徳で淫らな行いのこと)
  • 飲酒(酒を飲むこと)
  • 妄語(嘘をつくこと)

殺生では、牛や豚、鳥などを殺すことも許されないため、現代人の多くは殺生の罪を犯していると考えられます。それぞれの罪の重さを審査し、罪状に相応しい地獄の階層へと送られることになります。

地獄の種類と階層について

人間の生を終えた後、罪の内容や重さによってさまざまな地獄へと送られることになります。続いては、それぞれの地獄の種類とどのような罪を犯すことで送られるのかをみていきましょう。

等活地獄(とうかつじごく)

等活地獄とは、殺生の罪を犯した人が送られる地獄です。地獄のなかでは、最も軽い苦しみの地獄と言われています。

人はもちろん、虫や動物を殺しても等活地獄に送られます。また、自分で直接殺していないなくても、人の手によって殺された畜産物を食べても同様に殺生の罪を担うと考えられています。

等活地獄では、落とされた罪人達が延々と殺し合いを行うのが特徴です。等活地獄で死んでしまっても、涼風と共に生き返り、再び殺し合いを続けるという言い伝えもあります。

ただし、殺人を犯した人のなかで父や母、僧侶などを殺した人は、殺生の罪ではなく五逆罪として裁かれ、地獄で最も苦しみの深い阿鼻地獄(無限地獄)に落とされます。

黒縄地獄(こくじょうじごく)

黒縄地獄は、殺生の罪に加え、窃盗の罪を犯した人が落とされる地獄です。他人の物を盗むだけでなく、盗みが原因で盗まれた人が死んでしまった場合も殺生および窃盗の罪に該当します。

黒縄(こくじょう)とは、責め苦の際に「墨縄(すみなわ)」という道具を使っていることに由来する説もあります。昔の大工は、直線を引くために縄に墨を付けた墨縄を使用していました。墨縄をピンと張って木材に当てると直線が引けるため、その線に沿って木材を裁断するのです。

黒縄地獄では、熱した鉄の縄を罪人の体に当て、焼き目で線を引きます。さらに、焼けただれた肌の上から線に沿ってのこぎりや斧で体を切り裂く責め苦が特徴です。

その他にも鉄の縄で作られ、灼熱で熱せられた服を着せて焼かれたり、煮えたぎる大釜の上で綱渡りをさせられたりと、現代人のイメージする地獄に最も近いと言えるでしょう。

死んでしまっても黒縄地獄の鬼達が「生きよ、生きよ」と囁き、生き返っては責め苦を味わうことになります。

衆合地獄(しゅうごうじごく)

殺生、窃盗に加え、姦淫の罪を犯した人が落ちるのが衆合地獄です。仏教では邪姦(じゃきん)として、配偶者以外との性的行為を禁止しています。そもそも、仏教の教えでは性欲に支配されることを悪としており、配偶者以外との性的な行為は煩悩に支配された悪しき行いと考えられているのです。

その他、性暴力や子どもを性の対象として凌辱した人も、衆合地獄に落とされます。

衆合地獄では牛の頭をした鬼・牛頭(ごず)と馬の頭をした鬼・馬頭(めず)が、亡者たちを苦しめ続けるのが特徴です。彼らは罪人を追いかけまわし、恐怖と苦痛を与えながら殺すことを生業としています。

また、衆合とは「多く集まる」という意味を持ち、罪人の多くは追い立てられて集まり、最後にはまとめて殺されてしまうことが多いです。なかでも燃え盛る山間に入りこむと、山々が動き出しその間に押しつぶされて死んでしまう罰が有名です。

叫喚地獄(きょうかんじごく)

叫喚地獄は、殺生、窃盗、姦淫に加え飲酒の罪を犯した人が落ちる地獄です。仏教では、酒は心を乱すものとして戒律でも制限されており「不飲酒戒」を守るよう教えられています。

叫喚地獄は、罪人の苦しむ叫びが途絶えることのない事からその名がつけられたと言われており、大鍋で罪人を煮たり鉄の棒で打ったりと酷い苦痛を味わう地獄です。さらに、体中から蛆が沸き、徐々に体を食べられていく罰や鬼に矢を射られる罰など、強い恐怖を与える地獄でもあります。

痛みや苦しみ、恐怖に叫べば叫ぶほど罰は激しさを増し、罪人は転生するその瞬間まで苦しみに悶え続けると言われています。

大叫喚地獄(だいきょうかんじごく)

大叫喚地獄は、殺生、窃盗、姦淫、飲酒に加え、妄語(もうご)の罪を犯した人が落ちる地獄です。仏教では言葉の力を重視しており、虚言によって他人に害をなす行為を特に悪い行いと考えます。嘘をついて他人に不利益を与えたり、嘘をついて信頼関係を崩す行いは、非常に重い罪として考えられます。

大叫喚地獄では、熱した鋏で舌を引き抜かれたり、舌に針を刺されたりと舌に関する責め苦が多いです。「嘘をつくと閻魔大王に舌を引き抜かれる」という言い伝えも、大叫喚地獄の責め苦から生まれたのではないかと言われています。

焦熱地獄(しょうねつじごく)

焦熱地獄は、殺生、窃盗、姦淫、飲酒、妄語に加え、邪見(じゃけん)の罪を犯した人が落ちる地獄です。邪見とは、仏教の教えを正しく教えなかったり、本来の仏教の教えとは異なることを伝え広めることを言います。

間違った教えを信じることは時に差別意識を生むことがあります。例えば、「善い行いをしない者は悪人だ」と誤った解釈を持ってしまうと、悪い事をしていない人まで悪人になってしまいます。善い行いはあくまで努力義務であり、悪い行いをしないという事の方が大切です。しかし、誤った解釈では悪い人だけでなく、何もしていない人までも「善い行いをしていない」という理由で咎められてしまう可能性があるでしょう。

誤った教えを広めることは、多くの人を混乱に招く危険な行為です。そのため、特に重い罪とみなされ、焦熱地獄に落とされてしまいます。

焦熱地獄では、大叫喚地獄の10倍の苦しみを与えられるとされており、迦楼羅炎(かるらえん)で火あぶりにされ、死んでもまた蘇り、焼き焦がされ続けます。迦楼羅炎は不動明王の作り出す炎と考えられ、その熱さは一瞬で罪人を焼き尽くし、冷たさを感じるほどだと伝えられています。

参考:邪見 ――心に棲みつく悪の王様 – 日本テーラワーダ仏教協会

大焦熱地獄(だいしょうねつじごく)

大焦熱地獄は、殺生、窃盗、姦淫、飲酒、妄語、邪見に加え、犯持戒人(ぼんじかいにん)の罪を犯した人が落ちる地獄です。犯持戒人とは、仏教の教えを守り清らかに生きている尼僧に不埒な行為をする罪を指します。仏の教えに従って正しく生きる尼僧を害する行為は、特に重い罪として裁かれます。

大焦熱地獄は、燃えていない場所がないほどに、あらゆる場所から激しい炎が噴き出していると伝えられています。炎の刀で皮膚を剥がされ、高熱で溶けた鉄を体に流し込まれ、内外から炎の責め苦を受けるのが特徴です。

大焦熱地獄は、他の地獄と異なり地獄に落ちる前から責め苦が始まると言われています。輪廻転生では、死を迎えてから次の転生までに49日間の「中有(ちゅうう)」と呼ばれる期間が存在します。大焦熱地獄に落ちることが決まると、次の転生を迎える3日前からその身を焼かれ続けるのです。

阿鼻地獄(あびじごく)

阿鼻地獄は、五逆罪もしくは法謀罪を犯した人が落ちる地獄です。地獄で最も罪の重い罪人が落とされる地獄であり、無間地獄(むかんじごく)とも呼ばれます。

五逆罪は以下の5つの罪です。

  • 父を殺すこと
  • 母を殺すこと
  • 悟りに達した僧を殺すこと
  • 仏の体(仏像など)に傷をつけること
  • 僧団の和を乱すこと

法謀罪は、仏教の教えを信じず、軽んじ、嘘だと謗る行為を指します。仏教は人々を幸せに導くための教えです。そのため、教えを軽んじ、謀ることで、それを信じた多くの人々が救われる道を絶たれてしまいます。

五逆罪と法謗罪は、仏教において禁忌とされているため、最も深い地獄へと落とされてしまうのです。阿鼻とは「悲惨な状況」という意味を持っています。他の地獄では、苦しみ抜いて死んだ先に、一瞬だけ苦しみの絶え間があります。しかし、阿鼻地獄では息を吐く暇もない苦しみを永遠とも思われる長い年月、受け続けなければいけません。

参考:五逆・十悪:どんな人でも救われる? | 仏教・終活 総合情報〜浄土真宗(本願寺派・大谷派)に特化〜

その他の地獄

地獄は、等活地獄、黒縄地獄、衆合地獄、叫喚地獄、大叫喚地獄、焦熱地獄、大焦熱地獄、阿鼻地獄の8層で構成されており、「八熱地獄」とも呼ばれます。しかし、仏教の教えによると、熱ではなく寒さによって責め苦を与える「八寒地獄」についても伝えられています。

八寒地獄や十六小地獄など、八熱地獄以外の地獄についてもみていきましょう。

八寒地獄

八寒地獄は、八熱地獄の周囲にある地獄と言われています。頞部陀(あぶだ)地獄、尼剌部陀(にらぶだ)地獄、頞哳吒(あたた)地獄、臛臛婆(かかば)地獄、虎虎婆(ここば)地獄、嗢鉢羅(うばら)地獄、鉢特摩(はどま)地獄、摩訶鉢特摩(まかはどま)地獄の8層で構成されています。

八熱地獄とは対照に、寒さや冷たさによる苦痛を与える地獄と言われていますが、その内容は八熱地獄ほど詳しく言い伝えられていません。

十六小地獄

十六小地獄とは、八熱地獄の周囲にある小規模の地獄です。特定の罪を犯すと十六小地獄に落とされると言われており、その罪にはさまざまなものがあります。以下は十六小地獄の一部です。

罪の内容十六小地獄で受ける罰
鳥や鹿を殺生する沸騰した銅と糞尿の沼で溺れ、虫に体を食い破られる
刀を使って殺生する地上から噴き出る猛火に焼かれながら、両刃の剣が空から降り注ぎ身を斬られる
殺生した動物を食べる鬼に沸騰した瓮(かめ)に入れられ煮られる

この他にも、特定の罪を犯した人が十六小地獄に落とされます。

地獄から解放されるのはいつ?

地獄について知れば知るほど、救いがなく苦しみだけの世界であることが理解できるでしょう。しかし、仏様は地獄を有限の世界と説いています。

地獄には、いつか必ず終わりがあり、次の転生が待っています。これこそが救いであり、地獄は罪を悔い改め、やり直すための救済であるとも捉えられるでしょう。

地獄で過ごす期限には、さまざまな言い伝えがありますが、年代に換算するとおよそ以下のとおりです。

等活地獄約1兆6千億年
黒縄地獄約13兆年
衆合地獄約107兆年
叫喚地獄約853兆年
大叫喚地獄約6,821兆年
焦熱地獄約5京4,569兆年
大焦熱地獄半中劫
阿鼻地獄不明

天界の一日は人間界の100年ともいわれています。人間にとっては永久と言っても過言ではない刑期を地獄で過ごすこととなるでしょう。それほどまでに、犯した罪の責任は重いということです。

「蜘蛛の糸」からみる地獄と天国の分かれ目

地獄は、これまでさまざまな文学のなかでも取り上げられてきました。その最たる例として芥川龍之介が執筆した「蜘蛛の糸」が挙げられます。

蜘蛛の糸では、殺生や窃盗などの罪で地獄に落とされたカンダタが、生前に蜘蛛を助けた善行により救いの道を示されます。天国から垂れてきた糸を登れば、カンダタは地獄を脱することができたでしょう。

しかし、他の罪人が糸を登ってくるのを見て「この糸は俺の物だ!」と叫びます。その瞬間、糸は切れてカンダタは再び地獄に落ち、救われる道が絶たれてしまうというお話です。

善行は善行として返ってくる、そして他人を思いやる気持ちを持たないとそれは悪行として自分に返ってくるという教訓が読み取れます。仏教における「善行には善行が、悪行には悪行が返ってくる」という教えが分かりやすく描かれている作品です。

実際は、カンダタが思いやりを持って下から登ってくる罪人達を受け入れたとしても、か細い蜘蛛の糸は切れてしまっていたかもしれません。これも「善行であっても、行った善行以上の善行が返ってくる訳ではない」と考えられるのではないでしょうか。

蜘蛛を救ったからといって殺生や窃盗の罪が許される訳ではない。しかし、カンダタは蜘蛛の糸が垂らされた瞬間、救いと喜び、そして「善行を詰んでよかった」と感じたことでしょう。善行を詰む大切さを身を持って理解したことが、カンダタが蜘蛛を救った善行に対する見返りであり、再び地獄に落とされる絶望も含めて、生前の悪行の結果だとも考えられます。

地獄について知り日々の行いを見つめなおそう

今回は地獄について紹介してきました。犯した罪の重さによって落とされる地獄は異なり、どの罪も長い年月を苦しみに覆われながら過ごすことを求められます。

1つの過ちも犯さない人間はいないでしょう。しかし、できる限り過ちを起こさず、人に優しくし、他人を思いやる善行を詰むことで救いを得られる可能性もあります。

悪行の末、地獄に落ちることのないよう日々の行いを見直し、仏の教えに習って日々を生きてみてはいかがでしょうか。

よくある質問

Q1. 地獄は六道の中でどのような位置づけですか?

地獄は六道の中で最も苦しみが重い世界とされています。生前の行いによって転生先が決まり、罪が重い場合に地獄へ落ちると説かれています。ただし、地獄も輪廻転生の一部であり、永遠ではないと考えられています。

Q2. 地獄に落ちる具体的な条件は何ですか?

殺生、窃盗、姦淫、飲酒、妄語などの罪を犯すと地獄に落ちる可能性があるとされています。さらに、邪見や犯持戒人、五逆罪、法謗罪などは特に重い罪とされ、より深い地獄に落とされます。罪の重さに応じて落ちる階層が決まります。

Q3. 八熱地獄はどのように構成されていますか?

八熱地獄は等活地獄から阿鼻地獄までの8つの階層で構成されています。下層へ進むほど罪は重く、責め苦も激しくなります。それぞれの地獄には対応する罪があり、内容に応じた罰を受けるとされています。

Q4. 地獄での苦しみには終わりがありますか?

地獄は有限の世界であり、いずれ転生の時を迎えると説かれています。ただし、その期間は人間の感覚では想像できないほど長い年月に及びます。罪の重さに応じた期間を経て、次の生へと移ります。

Q5. 「蜘蛛の糸」は地獄の教えをどのように表していますか?

「蜘蛛の糸」は善行と悪行の報いを象徴的に描いた物語です。生前の善行によって救いの機会が与えられても、利己的な心によってその機会を失う様子が示されています。善行には善行が、悪行には悪行が返るという仏教の教えを表しています。

仏陀倶楽部では、 こうした日々の迷いや立ち止まりを、

一人で抱えずに言葉にする場があります。

監修者 「愛葉 宣明」

僧侶、著述家、宗教法人得藏寺 代表役員
愛知県名古屋市出身。浄土真宗大谷派である名古屋大谷高校業後、20歳で独立起業。自動車販売業、美容事業、飲食事業、リサイクル事業と、次々に事業を立ち上げる。
独立起業後10年を経て自身の中に湧きあがる疑問と向き合うため、事業を整理し、ヨーロッパを中心に世界30カ国以上を旅する中で、多くの宗教や文化、習慣や常識の違いに触れる。
「人は生きているだけで毎日が修行」という考えに至り、時代が変化しても自然淘汰されない“在り方”を仏教に見出す。
現在は誰もが「得度」し、僧侶になれる機会を提供している。

信念は、「人生を変えるのに修行はいらない」

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