お釈迦様から始まり、幾度の変遷は経たものの、お釈迦様の教えの本流を大乗仏教として日本に伝わった。現在では日本人の多くが大乗仏教を知っており、お経といえば南無阿弥陀仏と多くの人が言う。それがどの宗派なのか、お経なのか偈なのか、南無阿弥陀仏の意味すらわからなくとも、多くの人はお経として南無阿弥陀仏と手を合わせる。これはひとえに七高僧ととりわけ七高僧にも名を連ねる法然聖人(浄土宗)、そして親鸞聖人(浄土真宗)、果ては一遍聖人(時宗)のお導きであり、その人らを支えた方々のお力の賜である。
南無阿弥陀仏は読んで字のごとく、“阿弥陀如来に帰依する”ということである。
阿弥陀如来に帰依するということは、法蔵菩薩が如来になられる際にたてられた衆生のすべてを救うという誓いに学びともにするということ。このような法蔵菩薩の誓いや阿弥陀如来の教えがお釈迦様によって知らされたのが、『仏説無量寿経』『仏説観無量寿経』『仏説阿弥陀経』であり、そのお経を大事にするということである。
そして法然聖人は私達衆生に念仏として南無阿弥陀仏と10回唱えれば救われると説かれた。
その法然聖人の教えの真実を受け継いた親鸞聖人は南無阿弥陀仏にこそ救いの真実が有ると説かれた。
その後、一遍聖人はとりわけ阿弥陀経を重んじ、南無阿弥陀仏を踊り念仏とまでされた。
これだけの遍歴を知るだけで以下に南無阿弥陀仏が意味深く、真実を知る念仏であるかが伺い知れる。
南無阿弥陀仏自体が真実を知る念仏であるという点に注目すると、その言葉の意味を調べたくなる。すると南無はサンスクリット語でナマス、パーリ語でナモの音訳で、「帰命・帰依」。仏は菩薩から如来になれれたお姿、その様である。
そして、阿弥陀は語源が2つあり、1つはアミターユス、無限の寿命をもつもの、無量寿。もう1つはアミターバ、無限の光明をもつもの、無量光。無量とは数え切れないほどの数ということであるから、阿弥陀とは無数の命と光の存在と理解できる。
この存在自体が尊く、如来と位置つけるにはなんの疑問もなく、その存在自体に自身のよりどころにしたり、その存在自体から多くの気付きと学びを得るというのが南無阿弥陀仏であるといえるのではないだろうか。こう解釈すると南無阿弥陀仏自体が真理を知る念仏であると理解できる。
私が今ここにいて生きるを味わえているのは、父や母が私をこの世に生み出したからであり、その父母にも父母がおり…この無限の連鎖が有るからこそ、私の今がある。当たり前のことである。この当たり前のことが私自身に暖かさをくれる。相対的に人と比べるのではなく私自身の絶対的な評価に意識が向く。唯物的でも観念的でもない無垢な感謝が湧き上がってくる。そして何も変わらず特別なこともなく、良くも悪くもなく、ただそこに私があり、それがそこにあってそれでいいとなる。
人の最大の課題である死への恐怖は全く消えない。しかしそれも含めて人であると理解できる。かといって恐怖はあり続ける。それがありながらも私は今を生きている。この状態は黒と白の私を光が包んでくれているようである。
自然と合掌をし南無阿弥陀仏、ありがとうございますと口にする私がいます。
