いろは歌の構成:かな47文字に込められた無常観
「いろは歌」は、ひらがな(かな)47文字を重複せずに全て1回ずつ使っていることで知られる有名な歌です。この歌は単なる言葉遊びではなく、深い仏教的な背景を持ち、全てが移り変わる「無常観」を詠んだものとなっているそうです。
一説には、お釈迦様が最後に説かれたとされる『涅槃経』に登場する「諸行無常、是生滅法、生滅滅己、寂滅為楽(じゃくめついらく)」、すなわち「四句の偈(しっくのげ)」の意を汲んで作られたとも言われています。
いろは歌が伝える「四句の偈」の意味
1. 諸行無常(しょぎょうむじょう)
「いろはにほへと ちりぬるを(色は匂へど 散りぬるを)」
これは、「花は咲いて香っても美しくとも、いずれは散ってしまう」という意味です。
諸行無常とは、全てのもの(事柄)は移り変わり、生まれては消えていく。永遠に変わるものはない、という真理を示します。
2. 是生滅法(ぜしょうめっぽう)
「わかよたれそ つねならむ(我が世誰ぞ 常ならん)」
これは、「この世の中で、いつまでも同じ姿で行き続けることなどできるだろうか、いや、できない」という意味です。
是生滅法とは、この世に存在する不変なものは何一つ無いという教えです。
3. 生滅滅己(しょうめつめつい)
「うゐのおくやま けふこえて(有為の奥山 今日越えて)」
これは、「辛く、厳しく、険しい人生という山を今日も乗り越えていく」という、悟りへの道のりを表現しています。
生滅滅己とは、生と死の概念が滅し、現世の苦を超越することを目指す境地です。
4. 寂滅為楽(じゃくめついらく)
「あさきゆめみし ゑひもせす(浅き夢見じ 酔ひもせず)」
これは、「儚い夢を見ることもなく、この移ろう世界に酔いしれることもない、安らかな心境である」という意味です。
寂滅為楽とは、迷いを絶ち切り、心安らかな悟りの境地を得ることが楽しみであるという教えです。
日常生活の中の仏教の教え
小学校の頃からなんとなく知っていた「いろは歌」。改めてその意味を深く掘り下げると、私たちが生きる上での根本的な真理、無常観が込められていたことに気づかされます。
仏教の教えは、難しい経典の中にだけあるのではなく、昔からずっと私たちの身近な文化の中に、そっと語りかけられてきたのかもしれません。この気づきは、日々の内観を深めるきっかけとなるでしょう。


















