Report by 仏陀倶楽部 会員
瞬間的に湧き上がる怒りの感情をどう制御するか。仏教が説く「執着」と、現代心理学の知見を組み合わせ、感情の暴走を止める論理的な手法を整理。怒りの原因を定義し、穏やかさを取り戻すプロセスを提示します。感情に振り回されない自分を育てるための、具体的な思考法です。
仏教に学ぶ「怒り」の正体:三毒と執着
仏教では、人を苦しみに導く三つの根本的な煩悩として「貪(とん):むさぼり、瞋(じん):怒り、痴(ち):無知」が挙げられます。この中でも、特に抑えにくい感情の一つが瞋、すなわち怒りです。
私自身も、生活の中で不意に想定外の都合の悪いことが起きた時、瞬間的に怒りを感じることがよくあります。この瞬間的な感情は、不要な行動や発言につながる恐れがあるため、特に注意が必要です。私は、この怒りの感情が瞬間的に湧き上がることについて、自身の精進(忍辱)が不足していると認識し、なんとか改善したいと考えてきました。
怒りの感情はどこから来るのか? 心理学と仏教の視点
和田秀樹先生の著書『感情的にならない本』(PHP研究所)で学ばせていただくと、人との関係は「感情関係」であり、人と共感していくのに必要なものです。私たちは感情の生き物であり、感情は自然なこと。しかし、問題はその後の怒りが感情的になり、継続すると泥沼の状況になってしまうことだとされています。
同書の中では、感情的になる人は「自分の思い込みにこだわる人」だと指摘されています。これは、まさに煩悩(三毒)の中の貪(執着)ですね。自分が唯一正しいという執着が強くなると、感情が強く出てしまうのです。「自分の意識は、様々な考え方の中の1つでしかない」のですが、自分の中でのこだわりが強すぎると「決めつけ」となり、強い感情につながってしまいます。
「曖昧さ耐性」と「Wish思考」で感情をコントロールする
感情が表面化する原因として、物事を認知する際の「曖昧さ耐性」の不足があり、「未熟な人ほど白か黒かはっきりさせたがる」とされています。この「曖昧さ耐性」の不足から感情に出てしまう状況があるため、感情的にならない思考法の重要なポイントとして「白黒ではなく、薄いグレーか濃いグレーで考える」ことが必要とされています。人間関係でも100%の味方も100%の敵もいないことを念頭に置く必要があり、そうすることで突発的な感情を穏やかにすることができます。
また、「決めつける」強迫観念(Should思考)は、目標としては正しくても、現実は、「そうなるといいな」「こうだったら嬉しい」と願望や理想を肯定的に捉える程度の(Wish)思考で考えるのが適切な考え方とされています。「怒り」は、自分の考えへの強い執着が原因であると認識し、自身の認識への執着を改め、感情的な行動にならないよう努める必要があります。還暦を迎えた私ですが、白か黒かはっきり決めつける未熟な考え方が残っていたため、改善していけそうです。
瞬間的な怒りの感情への具体的な対処法
心理学的には、「心の器は、しょせん小さなもの」で「感情は放っておけば、だんだん治まってくる」という法則があるようです。感情をグレーなものとして捉えることで、「まあいいや」と切り上げやすくなり、次の感情への移り変わりも早くできるようです。
自分の「瞬間的な怒りの感情」が発生してしまった場合は、自分に対し「今はともかく」と言い聞かせて落ち着かせ、グレーの尺度に置き換えて評価することで、急な感情の高まりを避け、尾を引かないようにできそうです。怒りの感情が発生した場合も、いつまでも自分の気持ちばかりに向き合うのではなく、根本的な解決よりも、今どうできるかを考え実行することで、こだわりすぎない対処ができます。怒りの原因となった認識の相違など、変えられないものは放っておき、変えられるところから変えていくことにより、感情を穏やかに保てます。
喜怒哀楽は、感情の元となる人間の本能的な反応とされており、無理に押し殺せばストレスが生まれてしまうため、どのように準備し対処していくかが大事です。今回私が得た知識を実践することで、不要な怒りを避け、怒りの感覚を適切にコントロールできるよう精進いたします。
南無阿弥陀仏
















僧侶、著述家、宗教法人得藏寺 代表役員
愛知県名古屋市出身。浄土真宗大谷派である名古屋大谷高校業後、20歳で独立起業。自動車販売業、美容事業、飲食事業、リサイクル事業と、次々に事業を立ち上げる。
独立起業後10年を経て自身の中に湧きあがる疑問と向き合うため、事業を整理し、ヨーロッパを中心に世界30カ国以上を旅する中で、多くの宗教や文化、習慣や常識の違いに触れる。
「人は生きているだけで毎日が修行」という考えに至り、時代が変化しても自然淘汰されない“在り方”を仏教に見出す。
現在は誰もが「得度」し、僧侶になれる機会を提供している。
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